【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「それは、まさか、殿下を狙う刺客のものですか!」
「いや、そういうものではないから、心配しなくていいよ。それに、あれは私だけに向けられているようだから、君には影響がないのだな」
そう言ってひとりで納得し、シルディーヌの背後に視線を流していかにも楽し気にクスクスと笑う。
その様子からも、刺客ではないと分かったものの、シルディーヌの頭の中には疑問符が増えるばかりだ。
高貴な人の考えることはよく分からないが、ひとりで楽しんでいて、シルディーヌにはズバリと教えてくれない。
王太子殿下は、S系思考の持ち主なのかもしれない。
だからドSなアルフレッドと気が合うのだろうか。
「ああ楽しい時はすぐ終わるものだな。君と話せてよかったよ」
「それは、光栄でございます。今宵の殿下とのダンスは、私にとってとてもいい思い出になりましたわ」
約束通り二曲を踊り終え、王太子殿下がダンスの終わりの礼をとる。
すると、終わりを待ってましたわ!!とばかりに方々からいそいそと中央に出てきたご令嬢たちに、王太子殿下はどんどん囲まれていく。
その様は華やかな蝶が、ただ一輪の凛々しい雄花に群がるかのよう。
あちらこちらから甘い声でかけられる誘いの言葉を、王太子殿下は笑顔でそつなくかわしている。
こんなに引く手あまただと、自身にとって最良のお相手を選ぶのも簡単そうで難しいのかもしれない。