【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
王太子殿下の叔母の方を見ると、壮年の貴族たちに囲まれて談笑している。
どうやらシルディーヌは叔母から逃げるための役に立てたようだ。
再びアルフレッドの捜索を開始したシルディーヌが向かう先に、もうひとつの人だかりがあった。
それはちょっと遠くて中心人物は不明だが、ダンスを踊るスペースにあって、王太子殿下に群がる蝶の群れのようなかたまり。
「すごいわ。殿下のほかにも、モテモテの貴公子がいるんだわ。どんなお方かしら」
人気貴公子の姿をひと目見たい。
好奇心から、アルフレッドを探しながらも、華やかな彩りのドレスの集まりを気にするシルディーヌ。
近づくにつれて、中心にいるのはやたらと背の高い貴公子だと分かった。
そして、そのあまり動かない後ろ姿が、なんだか見覚えがあるような気がしてくる。
「あそこにいるのは、まさか……ひょっとして……もしかして」
シルディーヌの胸がざわざわと騒ぐ。
間もなく始まったダンス曲をきっかけに、群がっていた令嬢たちがぱぁっと散っていく。
残されたダンススペースで、緑色のドレスを着た赤毛のご令嬢と向かい合って始めの挨拶をしているのは、紫紺のタキシード姿の凛々しい殿方……。
「あ……アルフ!……やっぱり、そうだったの」
黒龍の騎士団長は令嬢たちからの人気が一番なの!と、ペペロネから聞かされてはいたが、まさか王太子殿下とほぼ同等とは思っていなかった。
ダンスも優雅で女性の扱いに手慣れた様子で、初めての舞踏会とは思えないほどに堂々としている。