【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「まさか騎士団長のマクベリーさまがいらっしゃってるなんて! 今夜はなんて幸運なんでしょうか」
「そうですわ。この機会に、私の名前を覚えていただかなくてはなりませんわ」
「噂通り、とても素敵な殿方ですわね」
シルディーヌのそばにいる令嬢たちが、ダンスをするアルフレッドをうっとりと見つめている。
みんな綺麗でスタイルもよく、胸の谷間が見えそうな色気たっぷりなデザインのドレスを着ている。
シルディーヌには、アルフレッドと踊っている緑色ドレスの令嬢も、大人の色気むんむんに見えてしまう。
そうすると、無表情に思えるアルフレッドも、鼻の下を伸ばしているように見えてくるから不思議だ。
「あれが、アルフのデレデレな顔なのかしら」
『シルディーヌさんが心配なはずですから』
フリードはそう言っていたが、アルフレッドは令嬢と踊るのに夢中で、シルディーヌなど眼中にないようだ。
幼い頃から思い起こせば、アルフレッドがほかの女性と一緒にいるところを見るのはこれが初めて。
いつも男友達と一緒か、ひとりでいた。
そうだ、アルフレッドと話す女性は、ずっとシルディーヌだけだったのに。
イジワルしてくるのも、シルディーヌだけ。
なのに……。今は、手を伸ばせば届く位置にいたアルフレッドが、急に遠くなったように感じる。
胸がぎゅっと痛み、ダンスをする姿から目を逸らした。