【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「それに、たまに手に負えない犯罪者が来るって、副団長のフリードさんに聞いたわ。うっかり見かけたり、すれ違ったりしたら、きっと恐ろしくて震えてしまって仕事どころじゃないわ」
「む……なるほど」
黒龍殿の配属から外してもらいたい。
そんな気持ちを込めて上目遣いに見れば、アルフレッドは、腕組みをして何事かを考えているようだった。
もうひと押しかもしれない。
そう思ったシルディーヌは、堅物アルフに通じるかは不明だが父親に甘えるような要領で迫ってみることにする。
「それから、貴公子さまに会えるチャンスがないもの。婿探しが難しくなるわ」
「それは、諦めろ。別の方法を探せ」
すぐにきっぱりと返事が返ってきたので、ちょっと怯むが、諦めずに食い下がってみる。
「嫌よ。婿探しは、私の王宮生活のテーマだもの。目標なの。だから……西宮殿がいいわ」
そう言った途端に、アルフレッドの顔つきが豹変した。
悪い顔でニヤリと笑う様は、まるで頭部に悪魔のツノがあるよう。
「知ってるか? 西宮殿の侍従は厳しいぞ。お前がミスすればガミガミ叱る。そんなとこを貴族院の連中に見られたらどうなる?」
「そんな……きっと、ミスしないもの。アルフは悲観的だわ」
「どうだかな。西宮殿と間違えるほどにそそっかしいんだ。大事な壺を割られたりしたら迷惑だ。俺は、仕方がないから、身を切る思いで、そそっかしいお前を黒龍殿の配属にしたんだ。俺の優しさに感謝しろ。だから、西宮殿はやめておけ」
アルフレッドは早口で言って強引に話を終わらせると、シルディーヌに反論する間も与えずに副団長のフリードを呼びつけた。