【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
アルフレッドは呼びつけたフリードと小声で会話を交わした後、シルディーヌに向かって命じた。
「お前は清掃のスケジュールを決めて、俺に提出しろ」
「え? 私が決めるの?」
仕事は指示を受けてするものだと思い込んでいたシルディーヌは、首を傾げてアルフレッドを見る。
黒龍殿の中は危険がいっぱいな印象があるし、シルディーヌが立ち入ってはいけない場所もあるだろう。
それに昨日と今で団長部屋と物置しか入っていない。
不案内なのに、どうやって決めればいいのか。
「そんな、アマガエルが雨を乞うような顔をするな。フリードに宮殿の中を案内させる」
またアマガエルって言った。しかも人前で。それに雨を乞うとはどんな表情か。
そんな憤りを覚えているシルディーヌを無視し、アルフレッドは「フリード、頼んだぞ」と言って、さっさと執務机に向かってしまう。
この部屋に入って来た当初と変わらぬ雰囲気を醸し出し始め、シルディーヌは開きかけていた口を閉じた。
もう“上に立つ者”の顔になっているのだ。言い返す隙も与えないなんて、アルフレッドはズルイ。
「じゃあシルディーヌさん、行きますよ。細かい規則もお教えしますから」
フリードは扉を開けた格好で、シルディーヌのことを待っている。
「……はい、よろしくお願いします」
ムカムカする気持ちを腹の中に収め、部屋を出て行くフリードの後に続いた。