【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「そんな中途半端じゃ、かえって気になるわ。なにを聞いても驚かないので、教えてください」
フリードは悩むような仕草をした後、自分が言ったと言わないでくださいと念を押したので、シルディーヌは大きくうなずいた。
「団長はまだ若いですから、バカにする団員もいまして、着任された当初は命令を聞かない連中が多かったんです」
「でも、アルフは多くの騎士たちの中から抜擢されたんでしょう? 敵を完膚なきまでに叩きのめす力とかで。バカにするなんて、おかしいわ」
「はい、その通り。しかも団長はそれだけではないです。頭脳明晰なところも評価されて、団長に任命されたんです。それを面白くないと思う連中がいるものでして。団長はそいつらをここに集めたんです」
言うことを聞かないから集めるのも大変で、当時から副団長であるフリードが手伝ったという。
「それで……アルフはなにをしたんですか?」
「全部で五十人くらいはいたでしょうか。そいつらをご自分の周りに取り囲ませて、『まとめて俺にかかってこい。俺が勝ったら、何事も問答無用で俺の指示に従え』と言ったんです。それで、かかって来た屈強の騎士たちを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ続け……疲れて倒すのを諦めた騎士たちは、やがてかかって来なくなりました」
「はあ……じゃあ、その、ちぎって投げた騎士たちがあの壁にぶつかり続けて……それで、穴が開いたんですか?」
同じところに投げ続けるのは、至難の業ではないだろうか。
玉投げだって、的に当てるのは難しいのに。
「いえ、違います。団長は、最後に、あの壁の部分を、素手でべこべこの粉々に壊して見せたんです。疲れ知らずで、それはもう、まさに鬼神のような凄まじさでした」