【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
「素手で!?……実は、丈夫そうに見えても、簡単に壊せたりします?」
「とんでもありません! ここに使われている木は、安物じゃありません。激しい鍛錬に耐えられるよう鋼のように丈夫なものが使われているんです。大砲ならば簡単に壊せるでしょうが」
シルディーヌは呆気に取られてしまい、声も出ない。
それが本当ならば、アルフレッドの拳は大砲並みということになる。
鬼神の異名は伊達ではない。
「団員一の力自慢でもここの壁は壊せませんでしたから、相当のものです」
「試した人がいたんですね……」
「それ以来、団長に逆らう者は誰ひとりいません」
それはそうだろう。もしも逆らうならば、死を覚悟しなければならないレベルだ。
「それから半年ほど経った今は、戦略の立て方の素晴らしさや人となりを知り、心から団長を尊敬している者ばかりです。だから、シルディーヌさんは、どうぞ安心してください!」
フリードは、手を握らんばかりの勢いで懇願するように言う。
その黒曜石のような瞳はシルディーヌをひたと見つめていて、返事をするまで動きそうにない。
安心とは、なにに対して?
いまいち意味が分からないまま、戸惑いつつも頷いて見せたのだった。