【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難


次に行ったのは、入り口近くにある守衛室。

ここにも誰もおらず、簡素な机と椅子があるだけの殺風景な部屋だった。

フリードは、宮殿の警備は団員が交代制で行うが、真面目に任務をする者は少ないという。

それは、『立ち入り禁止』であることと『黒龍殿は恐ろしいところ』ということが周知の事実なため、誰も宮殿に近づく者がいないかららしい。

一日中ぼんやり立っているのは、行動的な騎士団員にとっては、拷問に値する苦行なのだそう。


「あの、本当に、誰も、来ないんですか? ほかの宮殿と間違えてきたりとか……そんなことも?」


シルディーヌがおずおずと尋ねれば、フリードはアハハと笑った。


「そんな、そそっかしいお方はいませんね。黒龍殿の屋根には青地に黒龍の団旗が掲げてありますから、間違えようがありません。ネズミ一匹たりと近づきませんよ」

「……はあ、旗が……そう。そうですよね」

「そもそも侍従侍女の立ち入りを禁じたのは、昔戦争していた当時のことに起因しています。戦況が厳しくて団員たちがピリピリし、誰彼構わずに剣を向けてしまう者がいたためなんです。実際命を失くした侍従や侍女もいたと聞いていますから、相当ひどい有り様だったのでしょう。その過去もあって、ここに近づく者はいません」


警備の必要はほぼありませんと言って、にっこりと笑うフリードに対してシルディーヌは乾いた笑顔を返しておいた。


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