【電子書籍化】王宮侍女シルディーヌの受難
次は入り口から右側の部分、室内鍛錬場の隣にある部屋に移動する。
ここも大きな部屋のようで、両開きの扉がひとつあるだけだ。
「ここが、団員たちの食堂兼休憩室です。ああ……ここは……そうですね、ちょっと中を確認してきます。シルディーヌさんは、廊下で待っててください」
いいですね?と言うフリードの黒曜石の瞳がチカッと光った。
それは少し攻撃的なもので、有無を言わせない迫力がある。
穏やかで真面目そうな騎士の顔から、黒龍の副団長のそれになっている感じだ。
「フリードさん。中に、なにかあるんですか?」
見られてはまずい物とか、危険な物とか。もしくは人か。
だがフリードは、質問には答えずに扉に手をかけたので、シルディーヌは、扉が開いた瞬間を狙って部屋の中を覗こうと、精いっぱいの背伸びを試みる。
だが、さすが黒龍騎士団の副団長と言うべきか、目にも留まらぬ動作で扉を開け閉めして中に入られ、チラリとも見えなかった。
廊下に取り残され、ポツンと佇んでいたが、扉に耳を当てて中の様子を探ることにする。
部屋の中からは、ガタガタと物を動かすような音が聞こえてくる。
数人が怒鳴るような声もし、シルディーヌはこくんと息をのんだ。
「いったい、なにが行われているのかしら」
ますます扉に耳をくっつけ、中の音を真剣に聞くシルディーヌ。
その華奢な体が、背後から伸びて来た手によって、ぺりっと扉からはがされた。