メープル*パンケーキ【2巻】*Happiness story*

塞いでいた唇がようやく離れ、目を開けると満足そうに微笑む彼の色っぽい表情に目を奪われた。

鼻先が触れるか触れないかの距離。
彼の少し長めのサラサラの前髪が頬っぺたにかかって少しくすぐったい。

「―さてと、帰るよ♪?」

またキスされるのかと思ったけど…残念ながら予想が外れたみたい。
余裕の表情で体勢を立て直した彼は私が乗る助手席のドアを閉めると、そそくさと運転席に乗り込んできた。

エンジンをかけたら右手でハンドルを握り、伸ばしてきた左手の平に自分の右手を重ね…
あの日の夜みたいに優しく握ってきた。

「あのさ…言っとくけど。俺が恋愛対象として見てたのは初めから夏音さんだったから。」
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