奏でるものは~第3部~
「姉は、本当は、西田(サイタ)唯歌、私は西田(サイタ)歌織。正真正銘の姉妹よ。
知ってるんじゃないかな?
サイタグループって。
その会長が祖父なの。
高校を外部受験した私は、高校入学したとき、通称を母方の祖母の熊野に変えたの。
今の学校では私の苗字のことは誰も知らないの。
姉がいたことも…」
「そうなのか?」
優さんが言う。
みんな驚いている、昌さんを除いて。
「苗字を通称にしてる理由は色々あるけど、高校では、サイタとは名乗らない」
「大変だね」
龍くんが、呟くように言いながら、少し考えるように私から視線を外した。