ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー




「ったりめーだ!俺たちゃァ新選組だぇ?最強だからな!」




両頬を熱い体温に包まれる。

いつも触れる手よりも硬く大きな手。




「おいどけよ左之、俺を潰す気かっ」


「あーずるーい!私も入れてくださーいっ」




背中に加わる温度と重さ。




「無理せぇへんで下さいよ」




その背を支える者が傍らに座る気配。




「……お前いたのか」





無言で割り込んでくるまた違う気配。




「ちょっとー皆サン近すぎですー。しかも永倉さんなんてソコ!私もしてもらったことないのに!」


「小さい奴の特権だな」


「頭は愁んとこ、体は俺んとこ…おっ!俺達家族か!?」


「おい左之、その感じだともしかして俺を子供とか言うんじゃねーだろな」


「そーですよ、仮に家族としてこの場合愁くんは私の兄なので、原田さんは嫁ぐ事になるんですよ!」


「んなにぃ!?」


「あ、自分のことはお義兄さんと呼んでください」


「私は義妹ですね!」


「え、待って俺こんなゴッツイ嫁さん嫌なんだけど」


「…はじめぇ、コイツ等酷ェんだけど…」


「…うちの、愚妹が…迷惑をかける」




斎藤さん、まさかのそこポジション。

これには皆笑いが止まらなくて。



新八っちゃんの腕
左之の手
沖田さんの体
丞の声
斎藤さんの気配



皆どこか震えていたのがいつの間にか止まっていて。


そこは暖かい空間となっていた。



変わらずアタシの頭を撫でる手から、良かったなって声が流れてくる気がした。



悔しさと、やるせなさと、心配と。



きっと、さっきまでの皆の震えはそれを訴えていたんだ。




「なんですかこの手、邪魔です」




アタシの背にいる沖田さんはその手が気に入らないらしく、鬱陶しそうな声で弾いた。


案外強い音したけど、バシッて。
大丈夫かな。




「いっ、てぇな総司コノヤロっ…」


「わーん近藤さん助けて~」


「ふはははははは、しょうがないなぁ、反抗期か?」


「あはははっ…―――――」






















本当に家族の様だった。

暖かくて、優しくて、楽しくて。



でも、皆がこうして触れ合って笑いあうのはこれが最後だった。




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