ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
血の匂いが充満した部屋の中、彼が微かに笑った声がした。
「なんつー声しとるんや」
ふは、っと吹き出すような音とその後から聞こえてくる荒い呼吸音。
「嘘、だって、」
一週間前はフツーに…なんなら2,3日前もアタシの怪我の具合を心配して見に来てくれてた。
何で…どうして。
「俺は新選組の医者や。けどその新選組は局長と副長が居ってこそ。俺かてその2人を守る為なら命は厭わん」
その言葉で全貌を理解した。
あぁそっか。そうだった。
居ることが当たり前すぎて忘れてた。
いや、忘れてたかった。
守ったんだね、土方を。
怪我をしても、なお。
「…丞」
フーふーフー、早い呼吸音。
「…添い寝してあげるよ」
「ふっ…いらんわ」
「俺が添い寝するってなかなかないよ?」
「まだ寝たくあらへんの。
…隣座り」
土方がアタシを丞の隣に誘導し、座ったと同時に丞の熱すぎる体温を右側に感じる。
土方は扉の方にいったかと思えばそのまま扉を開け外に出てしまった。
「土方さんと話さなくていーの?」
「さっきぎょーさん話したわ。勿論局長とも話した」
「そっか…」