ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
「……」
「なんや文句言いたそうやな」
薄く笑って余裕そうに口を動かしているけど、段々とアタシの右側にかかる負荷が丞の状態をものがたる。
「文句ありまくりだバカ。
こんな時に変な力発揮しやがって」
「…ええんや、それにこの力もお前がいてくれたから…、別の力にすることが出来た」
「…、」
「人を殺すことしかできなかった忍の力を、人を助ける為に使えたのは…使うと決心できたのはお前のおかげや」
「丞、」
「俺にとって、…俺にとって、市村。君は大切な弟だ…!」
いつものそのネタを言う声は、笑っているような…それでいて泣いているように震えていた。
「ふはっ、なんでここでそれ言っちゃうかなぁ…」
「はは…ほな妹もよろしく頼んだで…」
湿っていく右肩にさらに丞の体重がかかる。
「丞、まだ寝たくないんだろ、起きて」
「添い寝…してくれるんちゃうか…」
間が開いていく息と息。
「丞、…」
「市村…、」
「すすむ…?」
「新選組…頼んだで」
「うん…」
「……」
「すすむ?」
「……」
「…すすむ?」
少し身じろぐと丞の体がグラッと傾き、アタシは膝で受け止める。
「すすむ」
瞼を開くと光と一緒に痛みが走る。
でもその光の奥に丞の顔が映った。
「何笑ってんだよバカ…」
口角と目元が緩んだまま、丞は目を閉じた。