ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
そして京を出たアタシ達は直ぐに京都の南…伏見の警護を命じられ、伏見奉行所を新たな屯所とする事となった。
「結局舞い戻りかよ!」
「でもやっぱりあの町とは違うよな」
「ほな斎藤…じゃなくて、山口さんはおらへんの?」
「…ここにいるが」
「……」
左之が文句を言い、少し寂しそうな新八っちゃん、さっきまで居た筈の斎藤さんを探す丞に、(ずっと居た筈なのに)何もない所からヌッと出てくる斎藤さん。
相変わらず影の薄い斎藤さん改め山口さん。
例の一件から斎藤一、ではなく山口二郎という名前になった。
密偵だったとはいえ元御陵衛士、名を変えなければ危険だ。
…まだ御陵衛士の生き残りはいるのだから命を狙われてもおかしくないのだ。
「…どうした、市村」
心配そうな声色、山口さんは本当に人の空気に敏感だ。
「沖田さん、そろそろ着きますかね?」
近藤さんの妾宅から此処まで、無事に来てくれるか
そのアタシの不安が山口さんには分かったみたいで。
優しくアタシの手を引き、ゆっくり歩き向かう場所は恐らく門の前だ。
歴史によると元御陵衛士の生き残りである阿部等が妾宅を襲ったとされている。
出立後だった為被害はない、と記されていても心配なものは心配だ。
「大丈夫だ、ほら…」
耳をそばだてるとザッザッと足音が聞こえる。
良かった、無事にこちらに来れたのか。
ホッと肩の力を抜いて、近くなった足音の元へ向かう。
下ろされた籠の中、
「こほ…あ、」
「いい子にしてました?」
「もう、愁くんてば。私子供じゃないんですからぁ」
拗ねたような沖田さんが可愛くてぎゅ…と抱きしめる。
あぁ、また細くなったみたいだ。
「ね、直ぐ会えましたよ」
「ふふ…愁くんもいい子にしてました?」
「俺はいつでもいい子ですから」
「「「(嘘だ、絶対嘘)」」」
背後から視線を感じたけどスルーして沖田さんが立つのを丞の傍ら、手助けをする。
「行きましょう」
安心したのも束の間。
部屋へと向かう沖田さんと丞を見送った、その直ぐ後の事だった。