ワケがありまして、幕末にございます。ー弐ー
「勝っつぁん!!」
近藤さんが御陵衛士の残党に撃たれ右肩を負傷した。
急襲だった為追う事が出来ず、近藤さんを守らんと必死だった隊士が2人亡くなった。
鉄砲を持った御陵衛士の残党は騒ぎに紛れ行方をくらまし、その後姿を見ることはできなかった。
沖田さんのことだけでも狼狽していた土方は勿論…
「大丈夫なのかよ…!?」
「急所は外れています。
ですが…」
声を荒げてその先を促す土方の背をゆっくりと擦る。
丞を責めてもしょうがないんだ、まずはアタシ達が冷静にならないと。
その意が伝わったのか土方はフーーーと長い溜息をつき、畳に膝をついた。
「弾が深くまで入りすぎています。取り除くにも場所が悪い」
「…っ」
「命に別状はないです。弾を体に入れたまま元気に過ごしている人も多いですから。
…まずは、傷をきちんと癒しましょう」
「…勝っつぁん」
「は、…っトシ…」
薄く目を開いた一瞬、痛さに眉根を寄せたままの近藤さんとやるせなさに拳を握る土方が見えた。
背後にも心配する気配がひとつ、ふたつ。
皆が不安に揺れる空気がする。
「近藤さん」
「…おぉ、愁君」
普段と同じ、とは言えない近藤さんの声色。
「近藤さんは皆のお父さんだから」
「…あぁ」
「今度は俺達子供が守るから」
「…」
「しっかり治してきてください」
誰も口を開かず静かだったせいかアタシの声と、鼻をぐずる音が響く。
「今なら妹もつけますよ」
「ははっ、総司のことか?」
「ちょーっとぉ愁くん私が妹ってどういうことですかぁ?」
後ろから沖田さんがのし、と覆いかぶさってきて必然的に土方にも圧し掛かる。
「お、い、重いんだよおめぇら…」
「えーお母さんひどいー」
「誰が母親だ誰が」
「ね、お母さんも居ることだし、ここは子供に任せて」
「おい、だから誰がお母さんだ」
さっきまでの不安が去り、どこか穏やかな空気が流れる。
あぁ良かった、大丈夫そう。
「トシ」
「…なんだ近藤さん」
「頼むな」
「…おう」