君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「今まで大人しかったのに、リンタールの王子が関わってくるとやけに必死だな。

相変わらずリンタールの人間はぬるい。
これだから腹が立つんだよ。

弱味を握る必要なんかないんだ。
そもそも、お前を拐う作戦を企てたのはあいつだし、実行したのもあいつだ。

お陰でリンタールの国境も、簡単に通過できた。
優秀な裏切者だよ」

「そんな。
うそ、でしょ…。

国王に忠誠を誓ってたじゃないですか!
毎日リンタールのために働いてたじゃないですか!」

ドン。

根気強く扉の向こうへ叫んでいると、怒りをぶつけられたように、外から扉を叩く音がした。

しばらく黙っていると、ようやく返事が返ってきた。

「あんなのはもうリンタールじゃない。

王国を守るのが私の仕事だった。
それをお前のような小娘がリンタールを救うだの言い出して。

私が忠誠を誓ったリンタールなどもはやどこにもない。

ならばいっそこの手で壊してやる」

嘘でしょ。
…隊長さんが裏切ったのは、私のせい?

私がリンタールの為に動いたから、こうなったの?

いや、もっと前か。

私がこの世界に来たから、こんなことになったんだ。

後悔で目の前がチカチカする。
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