君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「私は…、身分とか地位とか、そういうのには疎い生活を送ってきてたから、あんまりわかんないんですけど…。
自分の役割に縛られて、身動きできなくなってしまうツラさはよく知ってます。

自分らしくって言われても、自分っていうものがわからなくて。

でも、リンタールで過ごして、本当にいろんなことがあって、今は何となくわかるというか…。

たぶん、自分のことを好きになれたと思うんです。だから自分らしさっていうのも見つけられたんです。

きっと、ずっと持ってたものなんでしょうけど、ようやく気づけたってかんじです。


だから、何が言いたかったかといいますと」

「もういい」

思わず遮った。
それ以上聞きたくなかったから。

「ご、ごめんなさい。
色々と言い過ぎました」

「いや、そうじゃなくて。

言いたいことは伝わってる。
なんでお前なんかの言葉が突き刺さるんだろうな」

つまりは、自分が好きになれない自分を好きになってると思うなということだ。

兄の真似をしてるだけの自分を、俺は好きになれる訳がないな。

さっきの歌を聞いた時点で、こいつも苦労をしてきたんだろうなっていうのは感じてた。

苦しいのは俺だけじゃないってことか。
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