君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
待って。
カナトは今から何を話そうとしてる?

その話、聞きたくないよ。
でも心のどこかでは聞きたいって思ってる。

だから口を挟めない。

「黙っててごめん。
ずっと言えなかったんだ。

神楽弥が戻る方法探してたの知ってたのに。
いや、知ってたからこそ、言えなかった。
図書館にある関連書籍も全部隠した。

でも、ここに残るのか、それとも元の世界に戻るのか、決めるのは僕じゃない。
神楽弥だ。

この本によると、鏡の部屋が元の世界と繋がるのは、一回目に繋がった日から一番近い満月の夜」

「満月の夜って…」

ほら、聞かなきゃよかった。

窓の外を見上げる。
夜空には大きな丸い月が輝いている。

「今夜だ」

嘘でしょ…。

じんわりと、一番大きな鏡が光を放ち出す。

「戻るなら、今夜が最初で最後のチャンスなんだ」

そんな。
急に選択を迫られても、わかんないよ。
こんなことなら、強制的に連れ戻された方がマシだ。
なんで…。
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