君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
強い光とともに、神楽弥はこの腕の中から消えてしまった。

こうなるだろうと覚悟はしていたけど、それでも…。

神楽弥には見せまいと堪えていた涙が、つーっと頬を伝う。

部屋の扉が開く音がする。

「行っちゃいましたか。

あれ、泣いてる?」

「うるさい」

シンには全て話していた。

最後は二人でどうぞと、一人城の部屋に残ることを選んだ。

本当は、はっきりと別れるのが寂しかったんだろう。

シンはそういうところがある。

「泣いていいんじゃないですか?

誤魔化して笑えるほど、神楽弥との日々は軽いものじゃなかったでしょ?

俺は祭の片付けでもしてきますよ」

声のトーンがシンらしくない。
無理してるんだろう。

でもシンの言う通り、涙を我慢できるほど、軽い気持ちで向き合ってきたんじゃない。

立ち直るには、暫く時間がかかりそうだ。
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