君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
翌日。
神楽弥のことは僕とシン以外は誰も覚えていなかった。

そう。
これが以前のリンタールを救ったという伝説がおとぎ話となった理由だ。
あの本を書いた人以外の記憶は全て消えたんだろう。

「確かにいたんだけどな」

いつか、僕の記憶からも消えてしまうんだろうか。

いや、そんなことはさせない。

ノートを開き、神楽弥のことを綴っていく。

あの本のように、語り継がれるように。

まずはタイトルか。

神楽弥のことをイメージしたら、タイトルなんて一つしか思い浮かばなかった。

“リンタールの歌姫”

これに限るだろう。
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