君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「まずは、詳しい話を聞かせてくれない?
危機って、具体的にはどういう状況なの?」

カナトは頷くと、腰に掛けていた剣を置いた。
その真剣な眼差しに、緊張感が走る。

「リンタールは南側を海に囲まれた小さな王国だ。
北側は、ドルツ王国という巨大な王国に接しているんだ。

貿易や国民との交流は上手くいっていて、王国同士も友好的な関係を築いていた。
…僕が外交に関わるまでは。

それからは、ドルツ王国との関係は悪化していき、国境周辺での暴動。
賊も出始めてる。

そのせいで、にぎやかと有名だった町は活気を失って、リンドール王国らしさがなくなってしまった。
もうすぐ王国の祭りを控えてるんだけど、今年は開催しない方向に動いてて、とにかく元気がないんだ。

ここまで活気を失うと、王国として機能しないことも出てきてて…」

その話をするカナトもどんどん気持ちが落ち込んでいくように見える。

王子っていうからもっと自分を中心に考えてる人かと思った。
でも本当は、責任感が強くて、国民のことを思いやってる人なのかも。

「一刻も早く皆が安心して笑顔で暮らせるようにしたいんだ。

でも、力不足で情けない限りだ」

あ…。その感情、痛いほど覚えがある。
まるで私の心の内を見透かされたようだ。
この人と私はどこか似ているのかもしれない。

自分の力が及ばなくて悔しくなる気持ちには、これ以上ないくらいに共感できてしまう。
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