君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「あっれ、今日は朝から機嫌が良いんじゃないですか?」

「シン…!お前、どこから」

足音も全く聞こえなかった。
いつの間に背後に?

「上ですよ。木の上でちょっと休んでたんです。
それにしてもどうしたんですか?頬赤くしちゃって、気持ち悪い」

「気持ち悪いって言うな!」

この何かを知っていそうな口振り。
誘導尋問みたいで、勝手に追い詰められている気分になる。
神楽弥のことを言ったら、絶対にからかってくるだろうし。

ニヤついて楽しそうこっちを見てくる顔が目に浮かぶ。

決めた。
まだ教えない。

「今日は忙しいんだ。
会議で報告しなきゃいけないこともある」

「そうですか。
じゃ、俺は今日も暇ってことですねー」

身軽に木に手を掛けると、そのままスルスルと登っていく。

あれ、珍しい。
いつものシンならもっと根掘り葉掘り聞いてくるのに。
それはもうしつこいくらいに。

でもまぁ、聞かれないならそれに超したことはないか。
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