音を紡ぐ
斗季がマイクから離れて、ギターを肩にかける。


するとさっきとは違う楽しそうだけど真剣な顔に変わった。


樹哉のドラムが鳴り響く。


私の時とは違う、強くてハッキリしていて見ている人を掻き立てる。


樹哉のドラムに合わせて昴と斗季が一緒に加わる。


瞬間音がどっと溢れて、耳を劈く。


あぁ、これだよ。


初めて文化祭の時に聞いた時と同じ。


見ている側を一瞬に引き付けて、音をどんどん出していく。


斗季がマイクの前に立ってギターを弾きながら歌う。


♫すり抜ける君の視線

何度追いかけてみても

君と目が合うことはないんだ

何気ないその笑顔で

君は僕を傷つける

興味なんてさらさら無いくせに

何度も心の中で

こっちを向けと叫ぶんだ

君はそんな僕を

簡単にすり抜けていく

君のことを想っているんだ

そう、誰よりも負けないくらいに

叶わないのに君の後ろ姿を

探してしまうのはなぜだろう
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