100点テストの祈り鶴


ニコニコと嬉しそうに呼ばれる私の名前。まさか下の名前で呼ばれるだなんて予想だにしなくて、また一℃、体温が上昇する。

だって、みんな親しみを込めて花と呼んでくれる子が大半だ。

私は激しく動揺をした。


「な、なん、で下の名前で……!」

「花村あんずって、名前が女の子らしくて可愛いよね。呼んでみたかったんだ。これも願い叶った」


一体いくつの願いがあると言うのか、今でいくつめなのか。分からない。

分からないけど。


「ちょ、ちょっと待って……!」

「何?あんず」


ただただ恥ずかしい事だけは理解できる。


「な、名前呼ばれるのこんなに恥ずかしいと思ってな……」

「それって、俺だから恥ずかしいって事?」

「そ、れは……っ!」


当たり前の事ではないだろうか。だからって


「ね、どんな感じか知りたいから俺の事も下の名前で呼んでみて」


此方が呼ぶ方が更にハードル高い。


「むっ、無理……!」

「何で?あんず」


ニヤニヤと笑いながらまた耳元で名前を呼ぶ。


「絶対分かってるくせに……!」


どうやら私が知らないだけで、彼は意地悪らしい。



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