冷血部長のとろ甘な愛情
疑問を感じたとき、ちょうどカーブで体が揺れる。思わず差し出されていた腕に掴まってしまった。


「ご、ごめんなさい」


手を緩めて離そうとした。


「いいから、そのまま掴まっていて」


ほんの少し優しく聞こえた声にこくりと頷き、おそるおそる緩めた力を強めた。

何してるんだろう、私ったら。苦手というか嫌いと言ったし、嫌いと言われた人に掴まるなんて、どうかしてない?

頭大丈夫?

自分で自分の行動を戒める。

分かっている。こんな人に掴まるなんておかしいと分かっている。だけど、優しくない人に優しくされると調子が狂ってしまい、正常な判断が動かなくなるのだ。

そこでこの腕は部長ではなくて、ただの棒。そこにあったから掴まったまでだと思い込むことにした。


「次だな」

「あ、はい」


下車駅に着いて、開いたドアから降りる人の流れにそって私たちも降りた。しかし、なぜか私たちは手を繋いでいる。


「ふう、この時間はいつもこんな感じ?」

「そうですね。でも、今日は雨が降りそうだから余計に混んでいたんだと思います。あの、離してもらえますか?」
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