冷血部長のとろ甘な愛情
キスされる?と思ったけど、彼は絶対にキスはしない。耳元で「今夜いい?」と聞いてきた。今夜は何も予定はなかった。

「うん」と頷くと気にしていたドアが前触れもなしに突然開いた。ドアノブが回された音が聞こえたと同時に私たちは離れ、握られていた手は資料を掴んだ。


「お疲れ」

「お疲れさまです。何かありました?」


入ってきたのは部長だった。坂本くんは何か言い忘れたことでもあったのかという様子で姿勢を正していた。


「ああ、ペンを忘れてね。神原さんもまだいたんだ」

「はい、別件で話があったので。部長が言うペンはこれですか?」

「そう、ありがとう」


部長は私からペンを受け取り、胸ポケットに挟んでから私と坂本くんを交互に見た。ただ見ただけなのかもしれないけど、何かを見透かされているような気がしてくる。

さっきの坂本くんの言葉は耳元で言ったから私にしか聞こえていない。だけど、その前は?

もし廊下から中の様子を窺っていたとしたら……聞かれたらまずいこと話してたっけ?

坂本くんのらしくない口調を聞かれただろうか?
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