冷血部長のとろ甘な愛情
興奮しながら説明してくれた社員にお礼を言って、私たちは建物の方へと歩き出すが、専務の携帯が鳴ったので動きを止めた。

通行の邪魔にならないようすぐ近くにあったけやきの木の下に三人で移動する。


「………分かった。じゃ、すぐ戻るから」


通話を終えた専務は小さくため息をついた。なにか急用が出来たのかな。


「悪い。すぐ戻らなくてはならなくて」

「じゃあ、行きましょうか」


まだ学生の作品を見ていないのが心残りだが、仕方がない。「戻るぞ」と言う部長からの目配せに私は頷いて方向を180度転換させた。


「いや、戻るのは俺だけだ。タクシーつかまえて戻るから、俺のことは気にしないでいい。二人はゆっくりと見てきて」

「それなら、気を付けて」

「全く晴生はあっさりしてるよな。神原さん、晴生を頼むよ」

「はい……」


専務は手をあげ、大股で来た道を戻っていった。今さりげなく部長のことを頼まれたけど、それは部長とどうしろという意味なんだろうか。

こんな人を頼まれても困る。
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