冷血部長のとろ甘な愛情
「あのさ」

「はい?」

「あいつが好きなの?」

「あいつって、坂本くん?」


頷く部長を見て、歩きながら話を続ける。


「好きと言えば好きですが、特別な意味はないです」

「つまり恋愛感情はないと? 寝るのに?」

「そうですね。坂本くんは長年付き合っている彼女がいますし、私も……」


……と言いつつ、私には特別な相手はいない。付き合っている人もいなければ、好きな人もいない。だから、言葉が続かなくなってしまった。

私も……と堂々と言えるものは何もない。ただ真剣に結婚相手を探しているというだけで、そこに確たるものはない。


「君には付き合っている人はいないんだろ? あいつと付き合いたいとは思っていない?」

「いないし、思ってもいません。あ、ここですね。入りましょう……ちょっ、なんですか?」


作品が展示されている部屋の前まで来たので入ろうと促すが、部長に腕を掴まれたから驚いていて顔を見上げる。

部長は険しい顔で私を見下ろしていた。なぜだか知らないけど、かなり不機嫌そうだ。
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