冷血部長のとろ甘な愛情
血が付着した面を内側して返されたハンカチを私はカバンに入れた。

いつまでもお互いが譲らないでいたら収支がつかないので、ハンカチを返してもらうことで話がまとまったことにホッとする。


助手席に乗るように言われて、運転をする部長の隣に座る。ハンドルを握る手の絆創膏が目に入って、気にするなと言われても気になってしまう。

確かに私が悪いのではないけれど、うまく避けられなかった自分を悔やんでしまう。人に怪我をさせてしまうなんて……。


「あの、痛みませんか?」


だから、つい心配して聞いてしまう。


「君は優しいよね。痛みは全然ないよ。血が止まったらこの絆創膏も外すつもりだから本当に気にするなよ」

「でも……」

「本当に平気だから。それよりも神原さんが怪我しなくてよかった。小さなことでも君を助けられたことに俺は嬉しいくらいだから」

「え、嬉しい……ですか?」


部長は「うん」と頷いたけど、それに対してどう返したらいいか分からなく、私は窓の外へと視線を向けた。

今日の部長は厳しさが全くないどころか甘い。いつもと違うから調子がくるってしまう。
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