冷血部長のとろ甘な愛情
いつもは居酒屋からは二人で出るけど、今日は私が先に出た。坂本くんはもう少し一人で飲むという。

日中降っていた雨はやんでいた。まだ路面は濡れているが、傘をさす煩わしさがないのはいい。水溜まりを避けながら歩いた。

部長と待ち合わせしているカフェは自宅最寄り駅前にある。その近くには中学生の時に通っていた塾もある。

塾の看板を見上げてから、カフェのドアを開けた。


「お待たせしました」

「いや、時間ぴったりだよ」


部長が飲むコーヒーは残り三分の一くらいだった。私もコーヒーをオーダーする。


「部長、お夕飯は?」

「ああ、会社でサンドイッチ食べた」

「何時まで仕事していたんですか?」

「七時半くらいかな」


私が坂本くんと食事をしている時間、部長は一人で仕事。坂本くんとの食事を選ばなければ一緒に食事していただろう。

申し訳ない気持ちになり「すみません」と謝る。

部長は微かに口元を緩ませて、優しい目で私を真っ直ぐと見る。


「昔も思ったけど、君は本当に優しいよね。人の気持ちも思いやれるし、気遣いが出来る」

「いいえ、そんなこと……」
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