冷血部長のとろ甘な愛情
人の気持ちを思いやれていなかったから、坂本くんとの関係を一年も続けてしまった。だから、そんなふうに褒められる人間ではない。

いたたまれない気持ちでコーヒーに口を付ける。


「俺は君の優しさに救われたんだけどね」

「私の優しさ? あ、ハンカチですけど、どんないきさつがあって部長が持っていたんですか? 私、落としました?」

「いや。直接渡してくれたんだよ。大丈夫ですか?と渡された。まさかそこに人がいるとは思わなかったし、それも年下の中学生に心配されて驚いたんだけど、恥ずかしいことに涙は隠せなくてね……」

「涙? えっ……あ! もしかして……あのときの?」


今から15年くらい前の遠い記憶が甦ってきた。あの日、私は夏期講習の申込用紙をなくしてしまって、学校帰りにもらいに行った。

普段行かない時間だったけど、自習室は開放されていたのでついでに学校の課題をやっていこうとした。他には誰もいないだろうと入ったら、高校生が一人いた。

その人は驚くことにぼんやり一点を見つめて涙を流していた。
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