冷血部長のとろ甘な愛情
ほとんど見ることのない男の人の涙に驚いたけど、そっと近付いてハンカチを差し出した。

彼からしたら見られたくない状況かもしれないと思ったけど、なぜか声をかけずにいられなかった。少しでも気持ちが楽になればいいなと思って。

あのときの高校生が部長だった?

顔はぼんやりと輪郭くらいしか覚えていないけど、髪は短くて野球でもやっているのかと思う印象だった。つまり今とは全然違う印象だったはず……。

ハッキリと違う人だと断言は出来ないけど、違う人だと思っていた。


「ハンカチを受け取ると君は元気を出してくださいとだけ言って、小走りで出ていった。ハッとして追ったんだけと、もう姿が見えなくなっていた」


その場にずっと留まっていられず、課題は家でやろうと私はすぐに離れた。私のことを追っていたとは知らない。


「あの一週間前に祖母が亡くなったんだ。おばあちゃん子だったから、かなりショックだったんだけど、ずっと泣けずにいて。でも、あの日なぜか涙が出てきて……」


私はそこに遭遇してしまったわけだ。
< 96 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop