強がり女の唯一の男
家の近所の居酒屋。
「会社からまっすぐの帰りか? いつもより遅いんじゃないか?」
「最近はいつもこのくらいの時間かな~・・・仕事、きりのいいところまでって思っちゃってさ」
「俺も残業だったけど、小雪って真面目だよな~」
「そうかな?」
でも、確かに真面目すぎるのかな。と思う。
同じ会社に勤める安達君は、もっと早く帰宅しているのだから。
「どうした?」
急に公平に訊かれて驚く。
「何が!?」
「今、溜息吐いただろ!?」
「え!? 嘘!? 無意識!」
「無意識に溜息か~。 小雪、かなり疲れてるんじゃないか?」
公平にそう言われて、私は考え、
「・・・そうかも?」
と返事をした。
「悩み事とかあんのか?」
「悩みなんかじゃないよ。 ただ、ちょっと仕事に根を詰めすぎてるのかな~って思って」
「じゃあ、早く帰って風呂入って寝た方がいいんじゃないか?」
「そうだね~。 そうしようかな?」
「じゃ、帰るか」
「うん」
1杯のビールと少しのおつまみだけをお腹に入れて私たちは店を後にした。
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