強がり女の唯一の男
「そう。 ・・・最近じゃデートらしいこともしてなかったし、そう思われても仕方なかったのかも」
「すみません」
「・・・で?」
「あの日の電話・・・」
「何?」
「私・・・安達さんに抱かれて幸せでした。 だけど、シャワーから出たら安達さんは寝言で『池上』って言った」
俯き涙声になる彼女。
「・・・安達君は、すごく酔っていた?」
「はい。 酔っていたのは間違いありません。 だけど、抱いている相手を私ではなく池上さんと思うなんて・・・そんなこと考えもしませんでした」
「・・・」
私は何も言えなかった。
お酒を飲んでは肌を重ねてきた私達。
反対を言えば、素面の時に抱かれた記憶が無い・・・。
安達君はお酒を飲んだその先の行為はいつも私が相手だと思っていた?
だけど、私達は何時だって手軽なホテルで肌を重ね、泊まる事無く帰っていた。
それはつまり、前後不覚になるほど安達君も私も酔ってはいなかったということ。
彼女とは泊まったと言っていた。
それって、やっぱり安達君にとって、彼女が特別だったということでは?
と思う。
< 94 / 159 >

この作品をシェア

pagetop