EGOIST

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「散歩に付き合ってくれませんか」

そんな連絡がエレンからダンテへ送られてきた。

エレンは散歩というが内容はそんな穏やかなものではなく、地下街など裏社会での情報収集が目的だ。
現に、有事のためのボディーガードとしてダンテを呼んでいる。
だが、幼いころから裏社会での情報収集を行ってきたエレンにとってそれは、散歩のような日常的な事である事も確かだ。

特に断る理由もなく、ダンテは同行を了承したのが昨日の話。
そうして本日、エレンの「散歩」に同行するべく地下街にある喫茶店で待ち合わせた。

そこで紅茶を飲んで、2人は店を出た。

今回、ダンテは「散歩」への同行以外のことは聞かされていない。
つまり、それ以上ダンテが首を突っ込んではいけないということだ。
こういうことは珍しくなく、寧ろエレンが請け負った仕事の内容を聞かされることの方が珍しい。
それはつまるところ、ダンテがそれ以上知る必要がないという事であり、それ以上踏み込んではいけない、という事でもある。
それが、エレンとダンテの住む世界の違いを見せつけるように、ダンテには思えていた。

表社会だとか裏社会だとか、そういう簡単なものではない。
もっと厄介で底も知れない物だ。

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