EGOIST
訳も分からず呆然としていると、その部屋に大きな獣が入ってきた。
ライオンほどの大きさのある巨大なそれは、ダンテを見るなり襲い掛かる。
寸でのところで転がるようにそれをよけると、勢いよく獣は鉄製の壁に激突した。
だが、すぐにダンテへと狙いを定め、再び向かってくる。

逃げなければ。
しかし出口らしいものが見当たらない。
そもそも、体が動かない。
どうすればいい、どうすれば――――。

その時、何かが耳元でささやいた気がした。

コロシテシマエ―――

その言葉の後はよく覚えていない。
気が付くとあの獣は血を流して動かなくなっていて、その血にまみれて自分が立っていた。
手には何かを握りつぶしたような生々しい感触が残っている。
称賛する男の声がスピーカーから発せられ、部屋の中を反響していた。

あの日からいったいどれくらい経過したのか、ダンテには分からない。
ただひたすらに、目の前に現れる物を殺す日々が続く。
最初はただ必死に、行きたいがゆえにそうしていたような気がするが、今ではもう何のためにこんなことをしているのか分からない。

< 151 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop