EGOIST

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旧市街地地下。
鉄製のパイプがまるで蔓のように壁面に、天井に、張り巡らされている。
一日中街灯や建物に光がともる。
住居や店が立ち並ぶ区域は御三家が定めたルール上、抗争、薬の売買、売春行為等が禁止されているので比較的平和だが、カジノや酒場の並ぶ区域には大小さまざまな組織や組織相手に商売をする輩が往来し、抗争とまではいかずとも、暴力沙汰は日常茶飯事だ。

そんな常に騒がしい区域と穏やかな区域の境界線付近で1人の男が複数の体格のいい男達と乱闘していた。
オリーブグリーンの上着にGパン姿の男は周りの男と比べるとやや華奢に見える。
だが、男達の拳を軽い身のこなしでかわし、一瞬のすきに強烈な一発をその分厚い筋肉に覆われた体に叩き込む。
そうしてあっという間に男達はのされてしまった。

「たく、んな物騒なもんここで振り回すなっての。怖いもの知らずなのか、ただの馬鹿なのか」

そう言いながら、倒れた男の懐に手を突っ込み何かを引っ張り出す。
それは銃だ。
オートマチック式の銃だが、普通ならばついているはずの安全装置がついていない。
その他にも正規品と異なる部分が多々見受けられた。

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