EGOIST
「ありがとうございます。助かりました」

エレンはその姿を見て軽く頭を下げた。

「まったく、少しは逃げるそぶりを見せたらどうなんだ」

俺が間に合わなかったらどうするんだ、とダンテが渋い顔をした。

「貴方は間に合わせるという確信がありましたから」

等と言いながらエレンはにこりと笑う。
それにダンテは肩を竦めた。

「おぉ、おぉ」

部屋のほうに視線を向けると、フィランダーがふらふらと両手を前に出した状態で歩いてきている。
その視線はダンテへと向けられている。

「おぉ、我が息子。私は分かっているよ。あんなの君の本当の姿ではない。あぁ、可哀想に。この女にそうさせられたのだろう?大丈夫。私がすぐに君を助けてあげるよ。だから、さぁ」

こちらへ来いと、フィランダーは言う。

ダンテはちら、と視線だけでエレンのほうを見る。
エレンはただ、黙ってその様子を眺めているだけで何かを言うつもりも、何かをするつもりもないようだ。

ダンテは再びフィランダーのほうへと視線を向けた。
そうしてフィランダーへと手を伸ばす。

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