EGOIST
いつだったか予定があるからと断った際に、その後それが寂しくてその後の仕事の進みが悪かったという情報をアーサーの執事からもらい、それからというもの、よっぽどのことがない限り予定を空けておくというのがエレンとアーロンの暗黙の了解になっている。
それをアーサーが知っているのかどうかは定かではないが。

「今回は特にエレンは大変だったね」

大丈夫かい、とアーサーはエレンに視線を向けた。
その視線は子供を心配する親の色が見え隠れする。

「ご心配なく。この程度でどうこうなるほど柔ではありませんよ」

そう、エレンは笑った。
実際、反省することはあれど特に精神的に参ってなどいない。

「しかし、自分の読みの甘さを思い知りました。まだまだですね、私は」

そう、エレンは静かに言った。

「1人でやろうとしないことだ。ヴィンスもヒューイも決して1人ですべてを熟せたわけではない。彼らは自分ができないことをよく理解し、出来ない部分は部下で補い、出来る部分に全力を注ぐ。そうやってやってきたんだから。君も、そういう部下を見つけるべきだよ」

アーサーの言葉に、エレンは頷いた。

それから30分ほどで茶会は終わった。
アーサーと別れたエレンとアーロンは並んで歩く。

< 184 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop