EGOIST
「今回は本当にお疲れだな」
「いえ、このくらいで根を上げてはいられませんから」

アーロンの言葉に、エレンは静かに答える。

「ダンテはどうするんだ。あいつ、首つっこんじだったんだろ」

アーロンの問いに、エレンは少しばかり間を空けて答えた。

「とは言ってもまだ入口程度です。特に精神的に影響を受けているわけではないようですし、あの後は普通に日常に戻ったようですから、問題はないかと」

その答えに、アーロンは「そうか」とだけ返した。

「お前の当主就任も近いかね、陛下の口ぶりからすると」

アーロンの言葉に、エレンはアーサーの言葉を思い出す。
確かにあの言葉は、エレンの事を気遣いつつも言外に近いうちに当主になるからその準備をしておけ、と言っているように聞こえた。

「今のところイアンくらいか。他にいないのか?エルドレッドとか」
「彼のことは信用はしていますが………」

珍しくエレンの言葉の歯切れが悪い。
アーロンはまっすぐ前を見ていた視線をエレンへ向けていた。
一見するといつもの静かな表情であるが、その目の奥には確かな感情の揺らぎが見え隠れしている。
その感情がなんであるかも、その理由もアーロンは知っている。
だから聞いたりはしないし、指摘もしない。

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