EGOIST

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あぁ、まただ。
またあの忌々しい声が聞こえる。

ぐっと耳を力強く塞ぐ。
そんなことをしても何の意味もないことは承知の上だ。
だが、何もせずにはいられず、こうしていつも耳を塞ぐ。
ついでに目を閉じる。
こうしていないと、何かをしてしまいそうな気がする。
目の前にあるモノ全てを壊しつくしてしまいそうになる。

そんなことはしたくない。
そんなことは間違ってる。
そう分かっているはずなのに、忌々しい声が手招きをしている。
こっちへ来い。
全てを壊してしまえ、と―――。

あぁ、あぁ、もう嫌だ。

そう思いながら声も上げずにただ耐える。

手に、そっと触れる物があった。

それに目を開けると、下からこちらを覗き込む灰色の双眸。
触れる手は小さく、温かい。

そろそろと、手を耳から放す。
だらりと下げた手を、小さな手は握った。
もう、あの声は聞こえない。

「だいじょうぶですか？」
「さぁ、どうかな」

そう言いながら肩を竦める。
小さな手に、少し力が入ったような気がした。

「もう、分かんねぇ…………」

無意識のうちに、口から言葉が零れ落ちていく。

「何が正しいのか、何が間違いなのか、俺がここにいる理由も、もう何もかも………」

いっその事消えてしまった方が楽になれる気さえする。