EGOIST

2

ダンテは思わずその場で硬直した。

装飾が施された煌びやかなホール。
断章をする客の声があちらこちらで聞こえている。

そんな中、目の前にはよく知った少女が立っていた。

事の発端は数日前。
カイルとともにジョシュアの店で飲んでいる時の事だった。
突然父親が電話をかけてきたのである。

ダンテは父親を―――というかバスカヴィルという家を嫌っていた。
それ故に適当な理由をつけて家を飛び出して一人暮らしを始めてからというもの、自分からは家に寄り付かなかったし、連絡もしたことがない。
とはいえ、所詮はまだ学生である。
バイトで幾分か稼いでいるとは言え、学費などを全て自分で賄うことは難しい。
なので、実家の援助を借りながら生活をしているような状態だった。
そのため、縁を切りたくても切ることが出来ず、呼び出しがあれば応じなければならない。

電話の内容は、懇意にしている大手貿易会社の社長が開くパーティーに一緒に出ろというものだった。
義母は体調不良、兄が2人と姉が1人いるが、3人は仕事の都合で出席できないから、とのことだった。
正直、出たくないのだがダンテに拒否権があるわけもなく、渋々了承した。

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