EGOIST

2

男が女にやや乱暴な動作で金を渡し、去っていった。
女は乱れた服を整え、渡された金を手にゆっくりと歩き出す。
通りは酷く騒がしく、色とりどりのネオンが輝いている。

女がゆっくりと歩いていると、前から喋りながら歩いてきた男の肩が当たり、女の体が傾いた。
だが、その体を誰かが支えてくれた。
それに、昨日の昼間のことを思い出す。
しかし、その手は昨日のそれより白く細い。

「大丈夫ですか?」

そう尋ねられ、そちらに顔を向ければ小柄な少女が立っていた。
まだ10代ほどの、このネオンが輝く通りには不釣り合いな少女は、心配そうに女を見ていた。
声からして女であることは予想がついたが、まさか少女であるとは思ってもみなかった。
驚いた理由はほかにもあるのだが、今はそれより早く自分の足で立たねばと、慌てて体制を治す。

「えぇ、大丈夫。ありがとう」
「いえ。ケガがないようでよかった」

礼を言うと、少女は笑みを浮かべた。

女は、そのまま立ち去ろうとした。
彼女にとっても自分にとってもその方がいいことを知っている。
だが、聞きたいことがあった。
それを口にしていいものか迷っていると、先に少女のほうが口を開いた。

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