EGOIST
「もしよければ、お茶でもいかがですか?貴女にお伝えしたいことがあるんです」

そう、少女は言い、手を差し伸べた。
女は、考えるより先にその手を取った。

連れていかれたのはネオン街から少し離れたところにある小さな喫茶店。
落ち着いた雰囲気のそこは、とてもではないが同じ地下街とは思えない。

2人の前にはそれぞれ違う紅茶とケーキがおかれている。
少女にはブルーベリータルトとダージリン。
女の前にはチーズケーキとオリジナルブレンドティー。
チョイスしたのは少女である。

その少女はエレン、と名乗った。
10代にしては酷く落ち着き、大人びている。
一方で、女をエスコートする姿はどこか紳士を思わせた。

「………貴女を、見かけたことがあるわ。旧市街地にある小さな教会で」
「そうだったんですね。あそこの神父とは昔から懇意にさせて頂いているんです。実は、伝えたいこと、というのも神父からの言付けでして」

エレンはそこで一度言葉を切り、一呼吸おいて続けた。

「子供達を助けてくれてありがとう。あの子達は君のおかげでこれからも生きていけるよ、と」

エレンの言葉に、女は安堵の息をついた。

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