EGOIST
「それは、断言しかねます。最善は尽くしていただいていますが、酷い子は、かなり衰弱してしまっていましたから」
「そう………」

そう言ってアンジェリカは俯く。
そんなアンジェリカの額に、エレンがデコピンを食らわせた。
完全に虚を突かれたアンジェリカは目を白黒させる。
そして地味に痛い。

「以前にも言いましたが、貴方が悔やむべきことではありません。貴女は貴女のできることをやった。結果として2人の子供が救われたのなら、それは誇るべきことです」

エレンの灰色の瞳が、アンジェリカをまっすぐに見つめる。
紡がれる声は静かだが、確かな力がある。

「もしそれでも思うところがあるのだとするなら、ただ悔やむのではなく、何らかの形で彼らの助けになればいい。彼らは、生きているんですから」

そういって、あの時そうしたように、エレンはそっとアンジェリカの手を握った。
アンジェリカは、ただ頷いた。

「さて、処置は終わりました。あまり長居するのもよくないので、そろそろ行きましょうか」

そう言い、エレンは立ち上がり、アンジェリカに手を差し出した。
アンジェリカがその手を取ると、ゆっくりと引き上げた。

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