EGOIST
「な、なんなんだよお前!突然現れて俺達の邪魔をして訳の分からねぇことほざきやがって!俺達は正義だ。俺達は英雄だ!犯罪者なわけ」

ガウン

静かな通りに、バットや鉄パイプでアスファルトを叩いた音とは全く異質な音が響いた。
音の発信源は少女だ。
その手には、切れかけの街灯に照らされて光る黒い銃。
カツン、と空の薬莢が落ちる音すら、大きく聞こえた。

「使うつもりなんてなかったのですが。これでは警察が駆け付けるのも時間の問題ですね」

そう口にする少女は酷く冷静だ。
だが、男達を見る眼はまるで獰猛な猛禽類のそれのように、銀色の光を帯びた。

「お、俺は政治家の息子だぞ。俺に何かすれば」
「何かすれば、なんですか?政治家の息子だから裁かれない。政治家の息子だから何をしても許される。そんな甘ったれた考えのくそ野郎に殺された彼らは死ぬに死にきれないでしょうね」

言いながら、少女はゆっくりと歩き出した。
手には銃を持ったまま。
その銃口は、しっかりと男達に向けられていた。

少女のその頭をたたき割ることはたやすい。
だが、その前に自分達はあの銃で殺されるのではないか。
そんな恐怖心に襲われ、男達の体はじりじりと後ずさる。

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