EGOIST
と、ガクンと急に体制が崩れた。
後ろを見れば、いつの間にか川のすぐ近くまで下がってきていたようで、男達はそのまま川に落ちた。
川はたいして深くはなかったが、排水独特の臭いが鼻を突いた。

「正義のヒーローが聞いてあきれますね。ただ銃口を向けられただけで後ずさって川に落ちるなんて」

そう、少女は静かに言った。

「お前………お前、何がしたいんだ!」

男が叫んだ。

「いえ、別に」

そう、少女は言った。

「私は何もするつもりはありませんよ。私はただ、貴方方が相応の罰が下るのを見に来ただけです」
「罰、だと?」

男達はいぶかしんだ。

ここにいるのは自分達と少女のみ。
罰するというなら少女が何かをする、ということになるが、少女は何もするつもりもないという。
だとするなら、他に誰かがいるというのか。
男達は慌ててあたりを見回したが、やはり誰もいない。

「おや、聞こえませんか?」

語りかけるように少女が言う。

「ほら、近づいてくる音がしませんか?」
「な、何が」

その時、男達の体がグラリと揺らいだ。
何かに引っ張られるような感覚。
慌ててそちらに目を向けると、そこには無残な姿の誰かがいた。
あるモノは頭が変形し、あるモノは腕があらぬ方向に曲がり、あるモノはもう元の顔がどんなだったかもわからないほど変形している。

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