EGOIST
「貴方の雇い主は誰?」
「ノーコメント」

男の口調は軽い。
男はアデラの質問にまったく答えるつもりがないようだ。

「何が目的?」
「オタクらが調べてるお嬢さんの周りをウロチョロするのをやめてもらうこと」

これに関してははっきりと男は答えた。

アデラとメイナードの顔が引きつる。
自分達は細心の注意をしていたはずだ。
だというのにどうして気づかれたのか―――。

「あ、もしかして、気づかれるはずないと思ってました?ちょっとオタクらなめすぎ。もうずっとバレバレでしたよ」

これだから素人は、と男はカラカラと笑う。
何故だろう。
男は笑っているだけなのに、背中に嫌な汗が流れていく。

「……………私たちをどうするつもり?」
「さて、どうするつもりだと思います?」

そう問いを返してきた男が、にやりと笑った気がした。

先に動いたのはどっちだったか。
2人は慌てて逃げるようと走り出した。
だが、何かが足に絡まって2人は転んだ。

何が絡んだのかは見えない。
足に絡んだものを外そうと手を伸ばせば、それはきつく足首に巻き付いていてちょっとやそっとでは取れなさそうだ。
触った感触は酷く細い糸のような何かだ。

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