EGOIST
「この程度で真実を知った気になるとは恐れ入る。言っとくがな、殺し屋雇って邪魔者消したり嫌がらせしたりなんて大物ならいくらでもする手段だし、やろうと思えば誰だってできる。あのお嬢さんの爺さん、両親、姉弟、友人………誰にだってありうる。そのくらい裏社会ってのは身近なもんなのさ。それ以前に俺は一言も雇われただなんて言ってねぇですよ」

だからそんなものが都市伝説の真偽を決める材料にはなりはしないと、男は嘲笑う。

「つか、まず都市伝説が本当だってんならオタクら生きてないでしょ。そういう、自分達のテリトリーを踏み荒らすマナーのなってない奴らは嫌いますからね、裏社会の連中ってのは」

なんて男は軽い口調でとんでもないことを言い出す。
アデラは男の言葉に顔を青ざめさせ、メイナードに至っては涙目である。

つまるところ、本当に都市伝説通りであったなら自分達の命はなく、こうしてまだ自分達の首が繋がっているということは、あの都市伝説は単なる噂でしかないということになる。
男の話をすべて信じるつもりはないが、しかし妙な説得力が彼の言葉にはあった。

と、それまで足や腕にきつく巻き付いていた何かが解けて、急に体が自由になった。
それに2人は呆気にとられる。

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